不動産売却において重要なポイントとなるのが、売却で得た所得の税金処理です。
不動産売却による所得は、分離課税という方式によって計算されます。
しかし、分離課税とは一体どのような仕組みなのでしょうか?
本記事では、分離課税の仕組みや計算方法・減税できる特例について詳しく解説していきます。
- 分離課税の仕組み
- 分離課税の対象となる不動産の種類
- 分離課税のメリットとデメリット
- 分離課税における納税額の計算方法
- 税金の特例や控除の活用方法
不動産売却とは
不動産売却とは、所有している不動産を売却することです。
不動産の売却には様々な要因や目的がありますが、その際には税金の面で注意が必要です。
分離課税とは
分離課税とは、不動産売却において、所得税と住民税を分離して課税する方式です。
課税の方式には、大きく「分離課税」と「総合課税」の2つの方式があります。
一般的に皆さんの給料にかけられる税金は総合課税に分類されます。
分離課税 | 特定の所得(不動産所得や譲渡所得など)を他の所得(給与所得や事業所得など)とは別に計算し、独立して課税する方法 |
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総合課税 | 複数の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)を合算して一括して課税する方法 |
課税の分類
総合課税や分離課税の分類は以下の通りです。
所得の種類 | 内容 |
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利子所得 | 預貯金や有価証券などから得られる利息による所得 |
配当所得 | 株式や投資信託などの配当金による所得 |
不動産所得 | 不動産の賃貸や売買による所得 |
事業所得 | 自営業や法人の事業による所得 |
給与所得 | 雇用された労働者が給与として受け取る所得 |
退職所得 | 退職金や年金など、勤務の終了に伴って得られる所得 |
山林所得 | 山林の利用や森林経営による所得 |
譲渡所得 | 不動産や株式などの資産の譲渡による所得 |
一時所得 | 宝くじや競馬などの一時的な収入による所得 |
雑所得 | その他の所得で、上記に該当しない所得 |
この中で分離課税の対象となるのが、以下の3つの所得です。
- 譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡所得)
- 退職所得
- 山林所得
この中で「譲渡所得」だけは、土地・建物等及び株式などに限られます。
不動産・株式の売却を除いた譲渡所得は、総合課税の対象となりますので、間違えないようにしましょう、。
分離課税の仕組み
分離課税は、不動産売却による所得を普通所得とは別に取り扱うことが分かりました。
ではどういった税金がかけられるかというと以下の2つです。
- 所得税
- 住民税
住民税は、総合所得でもかけられる税で二重課税ではないかと疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、そもそも総合課税と分離課税は所得を分けて計算されるため、二十課税には該当しません。
分離課税の対象となる不動産の種類
分離課税の対象となる不動産、土地や自宅の一戸建て住宅やマンションなどがあります。
自宅用ではなく、投資用の物件や事業用の建物もすべて分離課税の対象ですが、特例の条件を満たせば、税金を安く抑えることができます。
こちらについては、後程説明していきます。
分離課税のメリットとデメリット
分離課税のメリットは、まず不動産売却による所得が明確になる点です。
所得が分離されることで、税金の計算や納税の可否が明確になり、スムーズな納税が可能となります。
また、居住用不動産には特例が適用される場合もあり、所得税や住民税の軽減が期待できることもあります。
一方、分離課税のデメリットは、税金の負担増加が挙げられます。
不動産売却による所得が分離されるため、通常の給与所得とは別に税金が課されることになります。
そのため、税金の負担増加を考慮して売却時期や売却価格を判断する必要があります。
分離課税の計算方法
分離課税の計算方法は以下のとおりです。
譲渡所得税=課税譲渡所得 × 譲渡所得税率
課税譲渡所得
課税譲渡所得とは、売却額から費用を差し引いた売却利益のことです。
不動産の売却において、売却額がそのまま譲渡所得になるわけではありません。
実際には、不動産を取得する際にかかった費用(取得費)と、売却に伴う費用(譲渡費用)を差し引いた金額が売却利益となります。
課税譲渡所得の計算式は以下のようになります。
課税譲渡所得=譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額
譲渡所得税率
譲渡所得税率は、譲渡所得に対して課される税金の割合を指します。
分離課税 | 税率 |
---|---|
短期譲渡所得 | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
長期譲渡所得 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いは、不動産の所有期間です。
売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」となります。
見てわかるように、長期譲渡所得の方が、税率が約半分になっています。
つまり、不動産を売却する場合は、5年を超えてから売却したほうがお得というわけです。
特別控除
特別控除とは、マイホームの売却による譲渡所得に対して適用される制度であり、最大で3000万円までの控除が受けられます。
この特別控除は、不動産の所有期間の長さに関係なく適用されます。
夫婦が共有財産としてマイホームを所有している場合は、それぞれが最大3000万円の控除を受けることができます。
こちらに該当する方は、その特別控除額も課税譲渡所得から差し引くことができます。
分離課税の計算例
では実際に計算事例を挙げてみましょう。
例えば、所有期間4年の課税譲渡所得が3000万円だった場合は、
となります。
所有期間が6年で課税譲渡所得が3000万円だった場合は、
となります。
見てわかるように、所有期間が違うだけでかなりの差がでてきます。
もしも所有期間が3,4年で売却を急いでいない方は、所有期間5年を過ぎてからの売却を検討しましょう。
課税譲渡所得がマイナスの場合は?
不動産を売却する場合、必ずしもプラスになるとは限りません。
場合によっては、「取得費」「譲渡費用」「特別控除額」によって、 課税譲渡所得がマイナスになる場合があります。
課税譲渡所得がマイナスの場合は、一切税金はかかりません。
総合課税の所得があったとしても分けて計算されますので、その心配もありません。
さらに、マイナスになった場合は、損失を翌年に繰り越して控除できる「繰越控除」が適用される場合もあります。
特例と5つの条件
分離課税方式では原則として、損益通算や繰越控除を行うことはできませんが、以下の条件を満たしている場合は、利用することができます。
- 居住用として取得した土地・建物であること
- 長期譲渡であること
- 住まなくなってから3年以内に売却していること
- 買い換え年の12月31日において、買い換え資産の住宅ローンが10年以上あること
- 譲渡年の前年1月1日から売却年の翌年12月31日までの間、日本国内の資産で住宅床面積50㎡以上であるもおを取得すること
まとめ
本記事では、不動産売却における分離課税について詳しく解説しました。
不動産売却によって得た所得は、分離課税方式によって計算されます。分離課税方式は、給与などの通常の所得とは異なる課税方式であり、売却した不動産については別途納税する必要があります。
記事では、分離課税の仕組みや納税額の計算方法について解説しました。
ま不動産を売却する際には、納税の義務や売却時の市場価格や需要の分析、専門家のアドバイスの活用など、様々な要素を考慮する必要があります。また、売却を選ばない場合には、不動産の有効活用や維持管理・収益化の考え方も重要です。
不動産売却は重要な決断です。
この記事を参考にしながら、十分な情報収集と検討を行い、適切な売却の選択をしてください。