3階建ての注文住宅を建てる時の相場と費用が高くなる2つの要因

人気の地域に注文住宅を建てようと思っても土地代が高くてあきらめてしまう方もいますが、中にはその地域で安い狭小地を購入して、狭い土地をうまく利用しながら注文住宅を建てようとする方もいらっしゃいます。

狭小地は土地が狭いだけでなく、角が鋭角になっていたり、台形や三角形などの不整形地になっているものも少なくありません。

注文住宅を建てる際には「建ぺい率」「容積率」「高さ制限」といった用途地域毎の制限があり、狭小地では有効的に利用するために3階建てになることが多いのが現状です。

一般的に3階建て住宅は平屋や2階建て住宅より費用が割高で注文住宅の相場から2~3割増しになることもありますが、今回は3階建て住宅の費用が増える要因や注意点、本当に3階建ての注文住宅は割高なのかを解説していきます。

三階建て住宅で費用が高くなる2つの要因

3階建ての注文住宅を建てる際に費用が高くなると言われている2つの要因は以下になります。法規制によるところが多いですが、安全な暮らしを確保するためには大切な規制です。

  • 3階建て住宅は構造計算が義務付けられている
  • 地盤改良をしなければならない場合がある

三階建て住宅は構造計算が義務付けられている

日本は世界有数の地震国で注文住宅を建てる場合は、まず倒れない建物を建てることが第一です。

建築基準法第20条でも「建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、建築物の区分に応じて定められた基準に適合するものでなければならない。」と定められています。

そして、建築物の区分として「住宅などの木造建築物で階数が3以上のもの」は、安全性を確かめるために構造計算が義務付けられています

基本的に平屋や2階建て住宅は構造計算が義務付けられていないため構造計算の費用はかかりませんし、必要最低限の耐震性があれば建築することができます。「住宅などの木造建築物で階数が3以上のもの」には、木造3階建て住宅が該当するため構造計算が必要となります。

構造計算とは、建物が建物自体の重さである自重や地震・強風による振動・衝撃の外力に対して、どのような力が生じるのかを計算することです。

構造計算を行い、建物の安全性などを判断したら構造計算書を作成して構造計算適合性の判定を受けなえればいけません。

もちろん構造計算や資料作成には費用がかかりますので、この構造計算の費用が3階建て住宅の費用が高くなる要因の1つとなっています。

注文住宅の規模にもよりますが、構造計算の費用としては20~50万円ぐらいが相場となります。

木造3階建て住宅は構造計算が義務付けられているので、構造計算を行わずに注文住宅を建てる平屋や2階建て住宅よりも安全面で高いと言えます。

2階建ての注文住宅でも構造計算を推奨

現在の建築基準法では、安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合していれば構造計算を行った構造計算書が無くても確認申請が通るようになっています。

しかし、木造2階建て住宅等のいわゆる4号建築物と言われているものは、構造計算が義務づけられていないだけで構造チェックをしなくてもよいというわけではありません

建築基準法の4号特例では、4号建築物で建築士の設計した建築物について建築確認申請の審査を簡略化して構わないとされていますが、審査が省略された部分については、「建築士と建築主の責任において法的適合性を確保することが求められる」ともあります。

4号特例はもともと必要な労力に対して効果が薄い審査の書類作成や審査手数料、長期審査期間などの負担を建築主に強いることは好ましくないという理由で設けられたものです。

実際にはこの4号特例により2階建て木造住宅で耐震性など構造部分の検討をしないまま建築されてしまう注文住宅が少なからずあります

確認申請時に資料の提出が求められていないので、本当に技術的基準に適合しているのかは誰にもチェックされません。

3階建ての注文住宅を建てる際には、構造計算が義務付けられているため必要ですが、2階建て住宅は構造計算をしなくても安全というわけではないですし、確認申請が通ったからといって安全性のお墨付きをもらったということではないので、2階建ての注文住宅を建てる際にも構造計算をしてもらったほうが安心です。

ハウスメーカー・工務店・建築設計事務所の中には自主的に構造計算を行う会社もありますので、そういった会社へ依頼するのも施工業者を選択する1つの判断基準となります。

2階建て住宅でも構造計算を行った方が安心

地盤改良をしなければならない場合がある

3階建ての注文住宅を建てる場合は、平屋や2階建て住宅より建物そのものの重量が増えるので、一般的な平屋や2階建て住宅に比べると、地盤調査から地盤改良や基礎工事に費用がかかる場合があります。

地盤調査とは、注文住宅を建てる土地が建物の重さに耐えれるかどうかを調査するもので、強度が弱い軟弱地盤や3階建て住宅の重さに耐えられるだけの強度がない場合は、耐えられるように地盤を強化する地盤改良を行う必要があります。

地盤調査は一般的に以下の3つの方法があります。

  • スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)
  • ボーリング調査
  • 表面波探査法

もっとも安い地盤調査はスウェーデン式サウンディング試験で、費用の相場としては3~10万円程度、もっとも高いボーリング調査では、費用の相場として15~30万円程度となります。

次に地盤改良は一般的に以下の3つの方法があります。

  • 表層改良工法
  • 柱状改良工法
  • 鋼管杭工法

もっとも安い地盤改良は表層改良工法で費用の相場としては40~90万円程度、もっとも高い鋼管杭工法では費用の相場として100万円以上となります。

軟弱地盤が深いほど地盤改良するための費用も高くなるので、土地選びも利便性だけでなく土地の状態なども考慮したほうがよいです。

また、地盤調査は基本的に購入した後に行います。購入する前に自腹で行うこともできますが、その場合は売主の許可が必要です。売主がNGをだしたら購入前に地盤調査することができませんので、まずは仲介役の不動産会社に相談してみましょう。

それと簡易的な情報であれば、Webサービスから調べることもできますので、そういったサービスを利用するのも1つの方法です。

地盤サポートマップ

Screenshot of supportmap.jp

地震サポートマップでは、住所を入力するとその地域の地耐力や地震時の揺れやすさを調べることができます。

住宅地盤情報提供システムGEODAS(ジオダス)

Screenshot of www.jiban.co.jp

住宅地盤情報提供システムGEODAS(ジオダス)では、地域を選択すると以下の情報を確認することができます。

  • 地盤調査を行なった結果「良好地盤」と診断された場所
  • 地盤調査を行なった結果「軟弱地盤」と診断された場所
  • 地盤が軟弱なため「地盤補強工事」をした場所
  • 「腐植土」が確認された場所
  • ボーリング調査のデータがある場所

国土交通省ハザードマップポータルサイト

Screenshot of disaportal.gsi.go.jp

国土交通省ハザードマップポータルサイトでは、住所を入力すると「洪水」「土砂災害」「津波」のハザードマップを表示してくれます。

こういったWebサービスを利用して、土地選びに活用することで効率よく土地探しができ、地盤改良の必要度合いを簡易的に調べることができます。

3階建てに限らず注文住宅を建てる際には是非利用するようにしましょう。

尚、ハウスメーカーの中には地盤調査費を無料にしている会社もありますが、その地盤調査費用は他の項目に含まれていることもありますので、安易に無料だからといって選択するのはよくありません。

このように3階建ての注文住宅を建てる場合の費用の相場が上がるとされている要因は建物の安全性を確保するためのものです。

構造計算は2階建ての注文住宅を建てる際にも行った方がいいですし、地盤改良も購入した土地が軟弱地盤であれば、平屋は2階建て住宅でも必要ですので、一概に3階建て住宅だからといって費用が高くなるわけではありません。

地盤改良は3階建て住宅でなくても必要な場合がある

三階建て住宅を建てる時の注意点

3階建ての注文住宅を建てる際に費用が高くなる要因と必要となる費用の内容・相場を説明しましたが、3階建て住宅を建てる際に注意しなければいけない点を説明していきます。

住宅の高さ制限がある

注文住宅を建てる場合に、自由に敷地いっぱいに広げたり高く建てるといったことはできません。

建築基準法では、「建ぺい率」「容積率」「高さ制限」「斜線規定」といったさまざまな制限が定められています。

この中の「高さ制限」は、建物の高さの上限を制限するもので、注文住宅を建てる土地の用途地域によって高さの上限が設定されています。

例えば、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域の場合は、高さの上限が10mまたは12mとなっていますおり、それ以上の建物を建てることができません。

3階建てになるともちろん高さが高くなりますが、ハウスメーカーなどが提案するプランのほとんどはこの上限を超えないような9.9mなど上限の範囲内で提案することが多いです。

工務店や建築設計事務所もこの高さ制限を順守しなければいけないので、しっかり考慮してプランを提案してくれますが、高さ制限により一部天井が低くなるなど居住性が悪くなる恐れもあります。

また、地域によっては都市計画法に基づく地域地区の1つで高さ制限(最低高さ・最高高さ)のある「高度地区」に指定されているところもあります。

どの地域に指定されているかは、役所の都市計画課で確認してみましょう。

用途地域によって高さ制限があるので、土地を購入する際は確認すること

生活動線が複雑になる

3階建て住宅の場合は、2階にリビングを配置することが多いです。主婦の方は毎日の買い物をしたものを2階まで運ばなければいけません。

他にも3階建て住宅は面積が狭いので、浴室と洗濯物を干すスペースが別々の階になることも少なくなりません。そうなると洗濯機をどちらに設置するかを考えなければいけません。

このように、1階・2階・3階と動線が分断されると生活に支障をきたすこともあるので、生活動線が複雑にならないように考慮する必要があります。

特に料理・洗濯・掃除の家事の動線は日常生活をイメージして生活動線を考えること

地盤がしっかりしている土地を選定する

3階建て住宅は建物の重量が増えるので、一般的な平屋や2階建て住宅に比べると、地盤調査から地盤改良や基礎工事に費用がかかる場合があると説明しましたが、そういった費用をあまりかけないように地盤がしっかりとした土地を選定することも費用を抑えるための方法の1つです。

土地を購入する際は、売主や不動産会社に相談して事前に地盤調査ができるかどうか確認しましょう。

一番安いスウェーデンサウンディング試験なら費用相場として数万円なので地盤改良の費用と比べると高くありません。安全を買うという意味でも購入前の地盤調査をお勧めします。

土地購入前に地盤調査ができるか確認すること

三階建て注文住宅の相場

一般的に建てられている住宅は、そのほとんどが平屋か2階建て住宅で3階建て住宅はあまり見かけませんが、特に地価の高い都市部では3階建て住宅の根強い需要があります。

また、建売住宅で3階建てを販売している会社はほとんど見ることがないので、3階建て住宅を建てたい場合は、基本的にハウスメーカーや工務店、建築設計事務所に依頼して建てる注文住宅になることが多いです。

ハウスメーカーでも3階建てに特化した商品ラインナップを積極的に用意しており、建築設計事務所でも狭小地を特性を生かした住宅プランの提案を得意とする建築家もいます。

ハウスメーカーや工務店、建築設計事務所のどこに頼むかによっても変わってきますが、やはり一番気になるところは3階建ての注文住宅の相場ではないでしょうか。

3階建て住宅は、平屋や2階建て住宅と比べると坪単価が数万~十数万円割高になると言われていますが、土地・建物購入で考えると決して割高になるわけではありません

都道府県延床面積(㎡)敷地面積(㎡)建設費(万円)土地取得費(万円)建設費と土地取得費合計(万円)敷地面積(坪)土地価格坪単価延床面積(t坪)建設費坪単価
北海道114.4258.12,608.5697.43,305.978.28.934.775.2
青森県115.3286.82,652.9614.33,267.286.97.134.975.9
岩手県115.1261.82,549.6703.93,253.579.38.934.973.1
宮城県121.7293.32,820.21,070.53,890.688.912.036.976.5
秋田県108.9255.22,397.9503.72,901.677.36.533.072.7
山形県122.5290.12,774.2842.83,617.087.99.637.174.8
福島県116.4305.22,856.7873.23,729.892.59.435.381.0
茨城県116.2280.12,723.4820.33,543.684.99.735.277.3
栃木県115.7279.72,740.1822.03,562.184.89.735.178.2
群馬県115.5292.02,601.2760.53,361.788.58.635.074.3
埼玉県111.4192.22,641.51,593.04,234.558.227.433.878.2
千葉県113.1211.72,711.41,313.84,025.264.220.534.379.1
東京都100.0113.12,389.03,239.85,628.834.394.530.378.9
神奈川県105.9151.02,545.22,267.74,812.945.849.632.179.3
新潟県116.0213.02,554.5793.53,348.064.512.335.272.6
富山県126.4246.32,740.1750.63,490.674.610.138.371.5
石川県124.3202.42,729.31,012.33,741.661.316.537.772.5
福井県124.6241.22,713.5761.83,475.373.110.437.771.9
山梨県116.1274.72,661.7833.53,495.383.210.035.275.7
長野県114.2293.12,673.3826.73,500.088.89.334.677.2
岐阜県116.4256.52,756.4867.83,624.177.711.235.378.1
静岡県114.4219.12,826.21,191.64,017.866.417.934.781.5
愛知県117.1193.02,912.01,623.94,535.958.527.835.582.1
三重県118.6249.42,808.2913.43,721.675.612.135.978.2
滋賀県117.0209.22,739.01,080.63,819.663.417.035.477.3
京都府106.3164.22,449.11,420.43,869.549.828.632.276.0
大阪府109.7134.02,448.11,819.94,268.040.644.833.373.6
兵庫県113.7184.42,653.21,452.44,105.655.926.034.577.0
奈良県116.5204.42,684.21,350.94,035.261.921.835.376.0
和歌山県113.2198.12,670.5895.33,565.860.014.934.377.9
鳥取県113.3247.22,465.9605.33,071.274.98.134.371.8
島根県113.4232.82,607.7664.33,272.170.59.434.475.9
岡山県117.3225.92,869.7974.03,843.868.414.235.680.7
広島県114.6211.02,734.61,142.93,877.564.017.934.778.7
山口県113.2269.22,887.2760.43,647.581.69.334.384.2
徳島県116.4239.02,698.8859.03,557.772.411.935.376.5
香川県116.3232.72,579.7835.23,414.970.511.835.273.2
愛媛県113.3205.12,446.3968.23,414.562.215.634.371.3
高知県112.3211.62,607.4995.73,603.064.115.534.076.6
福岡県114.8238.92,781.31,056.73,838.072.414.634.879.9
佐賀県115.6248.82,727.0756.93,483.975.410.035.077.8