400万円の見積金額から200万円まで減額させた見積査定の全貌公開

こちらは実際にお客さんから見積査定依頼があり、チェックした実例です。依頼主はショップオーナーで、新規店舗の内装やり替え工事の見積書をチェックしてもらいたいという依頼でした。

結果を先にお伝えすると最初に提出された見積金額が約410万円で見積査定をして施工業者に修正してもらった結果、200万円まで減額することができました。

この中には内容のチェックだけでなく、本当に必要な工事なのかお客さんに確認して減額した工事も含まれます。

私は、長年大手ゼネコンで見積関連業務に携わってきました。身近に接してきたからこそ見積書は信じていません。見積書を信じていない理由については、「ハウスメーカーや工務店の見積書は絶対に信じてはいけない」にまとめていますので、こちらをご確認ください。

今回は、見積査定依頼のあった実際の見積書を見ながらどのように減額していったのかを詳しく解説していきます。

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案件の詳細と見積査定の結果

依頼主:ショップオーナー
工事内容:ショップの新店舗改装工事
経緯:建築設計事務所へデザイン依頼後、施工業者に見積もりを依頼する段階で見積査定の相談を受け見積書チェック
店舗面積:約40㎡(約12坪)
提出された見積金額:4,098,092円
見積査定した金額:1,807,019円
最終見積金額:2,000,000円(-2,098,092円の減額

内訳明細書(4,098,092円)

※画像をクリックすると拡大表示されます

こちらは、総括表と書いていますが、工事毎にどのような項目でいくらかかるのか内訳をまとめた「内訳明細書」になります。

工事毎に金額が記載されており、どういった工事にどれぐらいかかるのか分かるようになっています。

工事項目 見積金額 査定金額 差額
仮設工事 76,500 66,300 -10,200
解体工事 130,450 118,710 -11,740
軽鉄工事、PB工事 186,285 129,585 -56,700
表装工事 296,060 256,705 -39,355
電気工事 633,650 239,230 -394,420
空調、換気工事 555,000 0 -555,000
造作什器家具1 464,300 256,200 -208,100
造作什器家具2 294,200 147,800 -146,400
サイン工事 48,600 24,300 -24,300
ガラス、ミラー工事 546,500 160,000 -386,500
雑工事 191,400 66,000 -125,400
諸費用 480,000 256,140 -223,860
小計 3,902,945 1,720,970 -2,181,975
消費税額 195,147 86,049 -109,099
合計 4,098,092 1,807,019 -2,291,074

最終的に見積査定すると約410万円の見積金額が約180万円までの減額という査定結果でした。どのように減額になっているのか各工事毎の内訳をみていきます。

仮設工事

こちらは、「仮設工事」の内訳書です。工事期間中に必要な設備のための費用であったり、現場で床・壁の仕上げ面の位置に線を引く墨出しなどの工事が仮設工事になります。

こちらでは、現場の墨出しと工事が終了した後の清掃費が計上されています。しかし、店舗の実際に施工する面積を算定すると30.0㎡ではなく「26.0㎡」でした。

4㎡の違いですが金額にすると10,200円(税抜)の減額です。

施工面積が違うと床・天井などの仕上げ材の数量にも影響しますので、1つの面積間違いで数万・数十万円の減額になる可能性もあります。

解体工事

こちらは、「解体工事」の内訳書です。既存の仕上げや不要な建築材料を解体する工事です。

こちらも店舗の実際に施工する面積が違うので、11,740円(税抜)の減額です。

軽鉄工事、PB工事

こちらは、「軽鉄工事」「PB工事」と2つの工事がまとめられた内訳書です。

「軽鉄」というのは、天井や壁に使われる下地材のことを言います。下の写真では、天井に軽鉄を取り付けて、そこの面に仕上げとして化粧石膏ボードを貼り付けています。

軽鉄は天井だけでなく、壁のボードを固定するために壁と壁の間にも間仕切として施工されます。

また、軽鉄は「軽量鉄骨下地」や「LGS」とも言われますので、見積書にこのような記載されていたら、天井や壁を作るための下地材と覚えておくとよいでしょう。

「PB工事」のPBはプラスターボードの略称で石膏ボードとも言われます。こちらは、壁や天井に張るボードの工事になります。

こちらの内訳書もチェックすると、数量間違いやサイズ間違いが見つかり56,700円(税抜)の減額となりました。

表装工事

こちらは、「表装工事」の内訳書です。壁や天井にクロス、床にタイルやシートなどを貼る内装の仕上げ工事になります。

こちらも数量間違いで39,295円(税抜)の減額です。

電気工事

こちらは、「電気工事」の内訳書です。天井照明を取り付けるための配線やスイッチ配線、コンセントなどを設置する工事です。

こちらでは数の数え間違いがありますが、それ以外にも「非常灯」と「誘導灯」の項目が抜け落ちていました。本来であれば、施工業者の見積ミスではありますが、正しい見積書にするためにも抜けている項目はチェック時に追加します。

追加する理由としては「正しい見積書にするため」ですが、それだけでなくトラブルを回避するためでもあります。

仮にそのまま見過ごした場合、実際に施工するときに気づくとお客さんにそれを請求する業者もいるからです。ミスに対してどちらの責任か擦り付け合いをするのは、双方にとってもいいことではありません。

また、抜け落ちた分もしっかり計上することで、他のミスを認めさせやすくするメリットもあります。

合っているかどうかも分からない見積書に対して設計変更や仕様変更をすることはナンセンスなので、見積書が正しいかチェックした後に予算内にどうやって収めるか検討することをお勧めします。

こちらでは数の数え間違いと抜けていた項目を追加したところ284,325円(税抜)の減額でした。

空調、換気工事

こちらは、「空調、換気工事」の内訳書で、空調機器や換気設備の取り付け工事になります。

新しく空調機器を追加する工事ですが、お客さんから話を聞くと店舗には元々取り付けてある空調機器があり、それを取り外して新しい空調機器を取り付けるということでした。

なぜ、わざわざ新しいのに取り替えるのか聞いてみると「設計事務所の担当者と現地にいってリモコンで操作したらつかなかったので、渋々新しいものを取り付けることになった」という話でした。

設計事務所の担当者は電気や空調工事のプロではないので、何が原因で使えないのか理解していないはずです。私も建築士の資格を持っていますが、建築に関するすべての知識があるわけでもないですし、使えるかどうかの判断もできません。

この空調、換気工事だけでも555,000円の費用がかかっているので、お客さんには本当に動かないのか業者に依頼して確認してもらったほうがよいとアドバイスをしました。

そして、業者に依頼して確認してもらったところ、空調機器としては古くなっているものの室外機なども正常に動作するということが確認でき、空調機器の新設を取りやめることにしました。

先ほども言いましたが、建築についてすべてのことを理解している人間はまずいません。もしも担当者に質問した回答があやふやだったり腑に落ちない場合は、プロに確認をお願いしてもらうか、ご自身でも調べるようにしましょう。

今回、ちゃんとプロに確認してもらった結果、無駄な工事をしなくて済んだので、555,000円(税抜)の減額となりました。

造作什器家具

こちらは、「造作什器家具」の内訳書で、店舗で使用する造作什器です。

什器だけで70万円以上しますが、大分費用を下げたいというお客さんの要望もあったので、造作したものではなく、流通している既製品ではどうかとアドバイスしました。

そして、お店のデザインを壊さない範囲で、同じような什器を既製品に変えたことで、費用を抑えました。

サイン工事

こちらは、「サイン工事」の内訳書です。サインとは建物に取り付けてある案内看板で、例えば壁にロゴが取り付けられているお店を目にすることがありますが、あのロゴがサインです。

他にもトイレの男の子マーク・女の子マークやエレベーターの壁に取り付けてある階数表示などもサインになります。

こちらは、階段上部のあまりお客さんも見ないようなところのロゴは必要か考えてもらったところ、不要ということで外しています。

ガラス、ミラー工事

こちらは、「ガラス、ミラー工事」の内訳書です。

項目の中に「GD-1」というガラスドアがありますが、約35万円もします。

こちらは店舗内が見やすいようにガラスドアにしたという話だったので、見やすくするためにガラス入りにするだけなら、他にも同じようなもので安いものはあると伝えました。

そして、見た目もさほど変わりなく安いドアに変更して費用を抑えました。

雑工事

こちらは、「雑工事」の内訳書です。見積書の項目に区分しづいら工事がこの中に含まれます。

諸費用

こちらは、「諸費用」の内訳書です。現場を管理するための現場管理費や施工に必要な費用などがこの中に含まれます。

諸費用は工事費に対して一定の割合(10%など)をかけて算出されることが多いので、工事費を下げることができれば、こちらの諸費用も比例して下げることができます。

ここまでが、各工事ごとにチェックした見積書の内容で、数量をチェックするだけでも見積金額が下がることが分かったか思います。

施工業者には、見積査定した内容と計算式が書かれてある「積算書」を渡して話し合いをした結果、大幅に見積金額を下げることができました。

再提出してもらった内訳明細書(2,000,000円)

こちらは、見積査定後に再提出してもらった内訳明細書です。各工事とも指摘した内容の多くが認められ修正されています。

見積査定で出した見積金額は1,807,019万円でしたが、話し合いを行いお客さんが「税込200万円でどうにかならないか」ということで、施工業者も了承して税込200万円で請け負うことになったそうです。

見積査定には相見積もりが大事

実は、今回見積依頼の段階で相談を受けたので、「設計事務所には1社ではなく複数の業者へ見積依頼する相見積もりをお願いする」ようお客さんへアドバイスしました。

例えば今回チェックした業者を「業者A」とすると、他の「業者B」からも見積書をもらっています。

ちなみに業者Bの見積金額は約620万円でした。

業者 見積金額
業者A 約410万円
業者B 約620万円

相見積もりをすることで、どれぐらいの金額が妥当なのか判断材料になりますが、見積金額だけで判断してはいけません

見積書で重要なのか中身の項目です。どういう風に見積書を作成しているのかをチェックするだけで、その施工業者の姿勢であったり質が分かります

皆さんは業者Aの見積内容を見て、数量も間違っているしあまりよくない会社といった印象を持っているかも知れませんが、必要な項目はちゃんと計上していますし、仕様の詳細も書かれていますので、見積書自体はしっかり作られている会社です。

図面には細かい寸法を書いていなかったところもあるので、多めに計上されていましたが、それでもちゃんと分けて見積金額を算出しているのは、本当の工事費用を算定した上で、どれぐらい利益を上乗せするのか考えていた証拠です。

逆に業者Bの見積書を見ましたが、手抜きの見積書でどんぶり勘定で算出された見積金額だとすぐに判断しました。

理由としては、業者Aのように細かく項目を挙げていないことや一式計上が多すぎる点です。

「一式計上」というのは、どういうことか簡単に説明すると

名称 規格・仕様 数量 単位 単価 金額
フローリング 12mm 18.0 9,100 163,800

のように数量と単価が分かるようになっているものが

名称 規格・仕様 数量 単位 単価 金額
フローリング 1.0 163,800 163,800

のようにどこの施工範囲で算定した金額なのか分からないような項目です。

こういった一式計上する見積書というのは、チェックする側からしてもまったく内容をチェックできない、ブラックボックス化した見積書です。

ちゃんと計算したものを一式で計上するならまだいいですが、一式で多く計上している見積書は絶対に意図的に分からないようにやっています

相見積もりのメリットとしては、見積書の内容を比較することで、施工業者の姿勢や質が分かるので、施工業者を選ぶ指標にもなります。

また、他のメリットとしては、施工に必要な項目の抜けが見つけやすく見落としによるトラブル回避ができることです。

電気工事で「非常灯」と「誘導灯」の項目を追加しましたが、あれはB社の見積書の中に含まれていた項目です。チェック時には項目が抜けていることに気づいていましたが、参考単価はそのB社の単価を入れています。

項目の書き方や計上方法は施工業者によって違いはありますが、施工に必要な項目の抜けを見つけやすくなることで、正しい見積書に近づくことができます。

最近は一括見積請求サービスを使って、複数の会社から一括で請求することができますので、見積書を見比べるのにとても便利ですし、色々調べるより利用したほうがてっとり早いです。

一括請求で見積書を見比べると見積書の内容で、その会社の質が分かりますので、取捨選択する意味でも多くの見積依頼をすることをお勧めします。

もしも、相見積もりを取らずにB社へ見積依頼した場合は、約620万円で発注していたかもしれません。

そうなると最終的に200万円で発注できた場合と比べると420万円も損した可能性があります。

見積書は小さな間違いの集合体です。

予算オーバーをしている場合に、正しいかどうかも分からない見積金額からの設計変更や仕様変更はナンセンスなので、お互いが納得して契約するためにもまずは、見積書が正しいのかどうかをチェックすることをお勧めします。

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分離発注で家建築。
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