タオルやバスタオルに黒カビ(黒ずみ)が生えた場合、対処法としてオキシクリーンを使う方法があります。
オキシクリーンは、カビ取りの洗剤としても活用されますが、間違った使い方をすれば、効果が半減してしまいます。
こちらでは、タオルの黒カビ(黒ずみ)を、オキシクリーンで効果的に除去する方法について詳しくまとめています。
タオルの黒い斑点は黒ずみや汚れ!?
まず、タオルの黒い斑点ですが、黒カビではなく、黒ずみや汚れというケースが多いです。
こちらについては、「タオルの黒い斑点は黒カビじゃない!?」で詳しく解説していますが、黒ずみや汚れだった場合は、バケツにぬるま湯を張り、もみ洗いしてしっかりすすげば汚れは落ちます。
それでも落ちない場合は、オキシクリーンを使って頑固な汚れや黒カビを落としましょう。
ちなみに黒カビが黒く見えるのは、胞子の色素の色です。
オキシクリーンでは、化学反応によってこの色素を分解して漂白します。
オキシクリーンとは
一般的に使用される漂白剤には、「酸素系漂白剤」と「塩素系漂白剤」の2つがありますが、オキシクリーンは、アメリカで生まれた粉末タイプの「酸素系漂白剤」です。
オキシクリーンの種類
日本で販売されているオキシクリーンには、日本版とアメリカ版の2つがあり、主に以下の種類に分かれます。
日本版とアメリカ版の大きな違いは、界面活性剤が入っているかどうかで、オキシクリーン(日本版)には、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)が入っていません。
オキシクリーンは、カビに特化した酸素系漂白剤ではなく、汗ジミ・黄ばみ・泥汚れなどの衣類や、キッチン、お風呂場、流し台などで使用できる漂白剤です。
後ほど詳しく説明しますが、タオルの黒カビの除去を考えるなら、界面活性剤が入っていない「オキシクリーン(日本版)」を使いましょう。
オキシクリーンの成分
オキシクリーン(日本版)には、以下の成分が含まれています。
- 過炭酸ナトリウム
- 炭酸ナトリウム
過炭酸ナトリウムとは、「炭酸ナトリウム」と「過酸化水素」が2対3のモル比で混合された付加化合物で、日本の法令上では「炭酸ナトリウム過酸化水素付加物」と呼ばれています。(別名:「過炭酸ソーダ」)
過炭酸ナトリウムは、水や金属、有機物と反応する性質があり、水に溶かすと、「炭酸ナトリウム」と「過酸化水素」の2つに分解されます。
炭酸ナトリウム
炭酸ナトリウムは、「炭酸ソーダ」「ソーダ灰」とも呼ばれ、水によく溶け、強いアルカリ性を示します。
そのため、石鹸の洗浄力を高めるためのアルカリ助剤として使われることが多いです。
過酸化水素
過酸化水素からは、酸素が発生し、泡の力で汚れを浮き上がらせます。
また、活性酸素による酸化殺菌の効果があり、カビを殺菌するのに有効です。
つまり、タオルの黒カビを除去するには、過酸化水素から発生する活性酸素が重要な役割を担っているということです。
先ほど、界面活性剤が入っていない「オキシクリーン(日本版)」を使いましょうと説明しましたが、過炭酸ナトリウムに界面活性剤を入れると、酸素の発生量が落ちます。
このことについては、「過炭酸ナトリウムを利用した実験教材」の実験結果で「特に界面活性剤は酸素発生時に大量に泡となり、酸素がうまく発生しない原因と考えられる」と考察されています。
界面活性剤は、油汚れに有効なため、衣類に付着した皮脂などの油汚れを落とす目的であれば効果がありますが、カビに関して言えば、活性酸素が強力な酸化殺菌効果を生むため、効率的に除去するなら酸素量を阻害しない(界面活性剤が入っていない)「オキシクリーン(日本版)」を使ったほうがよいと考えます。
これは、界面活性剤の入った「 オキシクリーン EX(日本版)」では、除去できないという話ではなく、どちらのオキシクリーンが黒カビの除去に効果があるかを考察した話なので、ご注意ください。
また、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)には、カビの種類によって、生育を促進する作用と、生育を阻害する作用の両方を持つ実験結果もあります。(黒カビ[C. cladosporioides]には生育阻害作用が働く)
こちらについては、「 種々の界面活性剤のカビの生育に与える影響」で詳しく考察されていますので、興味のある方は、ご確認ください。
漂白効果
黒カビは、60℃程度のお湯にしっかりタオルを漬け置きすると死滅させることができますが、黒い斑点は落ちません。
タオルについた黒い斑点が黒カビだった場合、黒く見えるのは胞子の色素の色です。
この色素を化学反応によって分解し、漂白してくれるのが活性酸素です。
つまり、オキシクリーン(日本版)は、タオルに付着した黒カビを活性酸素で酸化殺菌し、色素を分解してくれる漂白剤ということです。
タオルの黒カビをオキシクリーンで除去する方法
オキシクリーンには、主に以下のような使い方があります。
- オキシ漬け・・・漬け置き洗い
- オキシ足し・・・汚れ落ちサポート
- オキシかけ・・・溶液を直接かける
- オキシこすり・・・溶液をかけブラシでこする
- オキシ拭き・・・布に溶液を含ませ拭き取る
この中で、タオルの黒カビを除去するのに効果的なのが「オキシ漬け」です。
オキシ漬け
オキシ漬けとは、オキシクリーンで漬け置きする方法のことです。
漬けておくだけの簡単作業なので、以下の6つの工程で、誰でも簡単に実践することができます。
- オキシクリーンを適量入れる
- 黒カビがついたタオルをお湯に漬ける
- バケツに60℃程度のお湯を入れる
- バケツに蓋をする
- 60分ほど漬け置きして、キレイな水ですすぐ
- すぐ外に干す
1. オキシクリーンを適量入れる
まず、バケツにオキシクリーンを適量入れます。
オキシクリーンのキャップが軽量カップになっていて、キャップ1杯は約28g。
オキシ漬けの場合は、4Lのお湯に対してキャップ1杯分が適量となります。
お湯の量は、漬け置きするタオルが、しっかりお湯に浸かるくらいの量を入れてください。
お湯の水量 | オキシクリーンの量 | 質量パーセント濃度 |
---|---|---|
0.5L | キャップ1/2杯(約14g) | 2.7% |
1.0L | キャップ1杯(約28g) | |
1.5L | キャップ1+1/2杯(約42g) | |
2.0L | キャップ2杯(約56g) | |
2.5L | キャップ2+1/2杯(約70g) | |
3.0L | キャップ3杯(約84g) |
2. 黒カビがついたタオルをお湯に漬ける
オキシクリーンを入れたら、バケツに黒カビがついたタオルを折り曲げずに広げた状態で入れてください。
3. バケツに60℃程度のお湯を入れる
黒カビがついたタオルを入れたら、60℃程度のお湯を入れます。
濡れたタオルを入れる場合は、バケツに入れるとすぐに2~3℃水温が下がりますので、それを考慮して温度設定してください。
60℃程度のお湯にする理由には、以下の2つがあります。
- 黒カビを熱で死滅させる
- 色素除去の最適温度
黒カビを熱で死滅させる
カビは40℃以上になると生育がとまり、50℃ではとんどの菌糸が死滅することが分かっています。
しかし、「カビ対策マニュアル基礎編/文部科学省」では、カビ胞子は耐熱性があり、特に子嚢胞子は最も耐熱性が高く、80℃で30分程度の加熱処理によりカビを死滅させることができると記述されています。
80℃以上のお湯につけると、生地を傷め、火傷する危険性もあるため、60℃程度のお湯に抑え、長時間漬け置きすることで死滅させていきます。
色素除去の最適温度
「繊維上のかび色素汚染の除去」「過炭酸ソー ダの漂白効果について」「過炭酸ナトリウムを利用した実験教材」の実験結果では、過炭酸ナトリウム(過炭酸ソー ダ)は、概ね60℃~75℃分で60分漬け置きすると、漂白剤の効果が高いと考察しています。
実験結果では、70℃、75℃が一番効果があるという結論に至っていますが、生地の素材を考慮して60℃程度でまずは試してください。
温度調整
お湯の温度を知る術についてですが、60℃程度のお湯を温度計を使わずに調べる方法で、以下のようなものがありました。
- 沸騰しはじめて泡が立ち始めたぐらいが60℃ぐらい
- 沸騰したお湯に同量の水を加えたら60℃ぐらい
- 沸騰したお湯に少し少な目の水を加えたら60℃ぐらい
すべて試してみましたが、温度に差があり当てになりません。
コンロで沸かすとあっという間に温度が上昇し、40℃付近くらいから泡が立ち始めるため、60℃付近との違いが分かりませんでした。
水を加えるというのも、水温が季節によって違うため、量だけの調整は困難です。(都庁付近の水道水の水温データ)
そこで、温度が安定している氷の量で調整すると以下のようになりました。
お湯の水量 | 氷の数 | 水温 |
---|---|---|
1L | 12個 | 67℃ |
13個 | 65℃ | |
14個 | 63℃ | |
15個 | 61℃ |
実験では、お湯を沸かしてバケツに入れると水温は86℃程度になります。
そこから一気に冷蔵庫で製氷した氷を入れ、水温の変化を計測すると、1Lのお湯に対して、12~15個の氷で、60℃台の水温となります。
冷蔵庫で製氷した氷は、約12ml/個だったため、1Lのお湯に対して144ml~180mlの氷を入れると60℃台の水温となります。
お湯と氷の平衡温度を計算式で求めた場合、氷12個(144ml)で75.3℃となり、計測値と異なります。(様々な仮定や近似を含んでいるため)
一番正確なのは、やはり温度計を使うことですが、温度計で考えている方は、シンプルな棒状温度計か、他でも利用できる料理用温度計がおすすめです。
ちなみに、100円ショップでは、50℃までしか測れるものしか見当たりませんでした。